江本正志のページ

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日本のビール

はじめに
 居酒屋なんかに行くと、日本人の殆どが「とりあえず、ビール!」と言うが、「とりあえずとは何だ!」と僕はいつも思っている。ビール程、種類が多く、醸造所、同じ醸造所の中で醸造されるビールでも、その種類によって味が違うアルコール飲料は他にない。こんなことを書いても殆どの人は「所詮、ビールはビールじゃないか!」と言うと思うが、それは日本のまずいビールを飲んでいるからに過ぎない。僕はドイツに永年住んでいたため、ドイツの話を例えにしてみると、ドイツ人は魚があまり好きではない。何故、好きではないかというと、ドイツのデパートやスーパーには確かに魚屋さんがある。が、しかし・・・。ドイツで売られている魚の鮮度の悪いことと言ったらありゃしない。買って来て、煮魚にでもしようものなら、お鍋の中で魚は原型を留めることなく、崩壊している。これは、如何にドイツで売られている魚の鮮度が悪いかを物語っている。こんな鮮度の悪い魚が美味しいはずはなく、僕もドイツのデパートやスーパーで売られている魚しか食べたことがなかったら、間違いなく魚嫌いになっていたであろう。こんなまずい魚しかドイツでは手に入らないため、ドイツ人は魚嫌いなのである。このことからもお分かりのように、日本人の殆どは日本のまずいビールしか飲んだことがないため、アルコールが入っていて、量もあってしかも安いビールを「とりあえず、ビール!」と言って喜んで飲んでいるのである。
 まあ、実際にドイツやチェコなどの本場のビールを飲んだことのない人や、日本のまずいビールに舌が慣れている人にこんなことを書いても話が通じる筈がないこと位は分かっている。「所詮、ビールはビール!」と思っている人に、ビールの美味しさを伝えることは非常に困難を極める。そのため、そんな人達にビールの美味しさを分かってもらおうなどとは毛頭思っていないし、そんなことをするのは時間の無駄だと思っている。従って、ここでは「とりあえず、ビール!」と言わない人や「え?ビールって実は美味しい飲み物だったの?」と思った方、あるいは「もう少しビールのことを知りたいな~」という人達のために、ビールのことを少しだけお話しさせて戴くことにするので、もしお時間があればお読み戴ければ幸いである。


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ビールの分類
 ビールの分類法には様々あり、「どのように説明すれば一番分かり易いのか?」と少々頭を悩ませるが、一番簡単な分類方法があるので、ここでご紹介させて戴こう。「何故、ここでビールの分類法を説明するの?」と思われる方がいらっしゃると思うので、理由を先に述べておくと、僕が飲んだビールの批評のところには沢山のビールに関する専門用語が出ている。その説明文を読んでも専門用語が分からなければ、批評を読んでも何がどう美味しいのかが分からない。そのため、ここでは僕の各ビールの批評の意味をご理解戴くためにも、ビールの分類法について説明させて戴くので、少しの間お付き合い願いたい。
 ドイツでは“ビール純粋令”というものがあって、「ビールは麦芽(モルト)、ホップ、水、酵母以外のものは使ってはならない」という法律がある。そこで、一番分かり易い分類法は発酵(酵母)を元にした分類方法なので、発酵(酵母)の違いによる分類方法からご説明させて戴くことにしよう。ビールは、イギリスで生まれた上面発酵ビールのエール、ドイツで生まれた下面発酵ビールのラガー、そしてベルギーで主に醸造される野生酵母による自然発酵ビールの3種類に大別される。更に、これらのビールは細分化され、上面発酵ビールなら、イギリスの「ペール・エール」「スタウト」、ドイツなら「アルト」「ケルシュ」「ヴァイツェン」、ベルギーなら「ホワイトビール」「ストロングエール」「セゾン」などのタイプに分類される。また、下面発酵ビールなら、チェコの「ピルスナー」を筆頭に、ドイツの「シュヴァルツ」「ドゥンケル」「ボック」「ラオホ」などに、そして自然発酵ビールなら、ベルギーの「ランビック」「グーズ」「クリーク」「フランボワーズ」などに分類される。
 発酵方法や酵母の違いだけでも、これだけ沢山の種類があることから、如何にビールは奥が深いかということが少しはご理解戴けたのではないだろうか?
 「上面発酵」と「下面発酵」、それに「エール」と「ラガー」という言葉が出てきたが、これらが何を意味するのかだけでも覚えておくと、ビールの楽しみ方が大きく違ってくるというものだ。上面発酵と下面発酵では使用する酵母が元々違っている。上面発酵で使用する酵母はSaccharomyces carlsbergensis(サッカロマイセス属のカールスベルゲンシス)という酵母(この酵母は1970年からSaccharomyces uvarum、1984年からSaccharomyces cerevisiaeに統一された)、そして下面発酵で使用する酵母はSaccharomyces cerevisiae(サッカロマイセス属のセレヴィジア)という酵母を使用している。それぞれの酵母は活動する温度が異なり、上面発酵の場合、即ちSaccharomyces carlsbergensisは16 ~21度で、また下面発酵の場合、即ちSaccharomyces cerevisiaeは 4 ~ 10度で活動する。この条件下で発酵させると、Saccharomyces carlsbergensisは発酵中にブクブクと表面に浮かび上がって層をなすが、Saccharomyces cerevisiaeの場合には発酵が進むに連れて、発酵タンクの下に沈む。そのため、上面発酵、下面発酵というような名前が付いている。尚、Saccharomyces carlsbergensisの発酵温度は高いため、発酵時間は3 ~ 6 日と短く、Saccharomyces cerevisiaeの発酵温度は低いため、発酵時間は 6 ~ 10日と長くなっている。
 このようにビールは発酵(酵母)によって全く異なった味になるが、日本のビールばかりを飲んでいる人達にとっては、上面発酵のビールは奇妙な飲み物に思えるのかも知れない。最近は、日本でも地ビールが沢山出回っているから、まずはそれらをお試し戴きたい。「なんじゃ、こりゃ!」というビールが沢山存在していることは否めないが、中には外国のビール顔負けのビールがあるので、「値段の高い外国のビールはちょっと・・・」という人は、地ビールを飲んでみることをお勧めする。そうすれば、必ずやビールは非常に奥の深い飲み物であることが分かるであろう。


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お勧めのビール
 日本には幾つかブランドがありますが、そのブランドの中では今のところサントリーのプレミアムモルツが一番美味しいと思います。札幌の夏祭りで飲んだプレミアムモルツは最高でしたね。他には、やはりエビスビールが美味しいでしょうか。但し、こういったブランドのビールよりも、地ビールにとっても興味があります。あちらこちらに旅行する度に、そこの地ビールを飲むのですが、今までで一番美味しかったと思ったのは、新潟の越後湯沢にある湯沢高原ビールでした。但し、この会社は残念ながら倒産してしまったため、もう飲むことは出来ませんが、湯沢温泉で飲んだあの味は今でも忘れることができません。他には、富士山の麓にある富士桜高原ビールというのもなかなか素晴らしい味です。ここには、非常に珍しいビールがあります。それは、ドイツのバンベルクというところで作られたラオホビールというビールです。燻製ビールというものですが、なかなか珍しくて美味しい味です。騙されたと思って一度飲んでみては如何でしょうか?

お勧めできないビール 美味しいビールを探すのはなかなか難しいですが、まずいビールはどこにでもあります。日本のビールであまりにも印象深かったのが、小樽ビールです。何とも水臭い味で、とても飲めたものではありません。小樽ビール程ではありませんが、千歳ビールも非常に水臭く、ビールとはとても思えない程酷い代物です。


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